奨学生レポート

スイス/ジュネーブ国際開発高等研究所

平成27年度9月

写真: 国連欧州本部前の広場

こんにちは。私は大真奨学金を頂いて9 月からスイスのジュネーブにあるThe graduate institute of international and development studies という大学院の2年間の開発学修士プログラムに進学させていただいております。ジュネーブの物価は、先進国の中でも高いと言われている日本と比べても1.5~2倍ほど高く、ここでこうして勉強を続けることができるのも大真奨学金のおかげです。私費留学や国費留学として様々な国から学生が集まってきているこの土地で「日本企業からの奨学金」を頂いている、というのは他の学生とは少し違った形で国を代表しているように感じ、非常に誇りに思っております。

様々な学生が集まるこの都市、ジュネーブはスイスにある非常に小さい都市なのですが、国際機関が文字通り所狭しと並んでいる国際都市です。毎日のように大学から徒歩5分の所にある欧州国連本部前でデモ活動が行われ、道行く人に話しかければ大体国際機関に勤めている方、というように国際社会の動向に非常に敏感になれる場所で、開発学を専攻する身としてはこれ以上の学習環境は無いと思っています。

ジュネーブの公用語はフランス語であること、また多くの国際機関では英語とフランス語が公用語であることから、通常の授業は英語で行われるものの入学直後の3週間は毎日フランス語の授業のみを受け(フランス語で教わります。) 、街で買い物するのにもフランス語しか使わないという生活を送っています。院の授業が9月末から本格的に始まり、フランス語の授業は1週間に1回のみとなりましたが、実際に学んだ直後にフランス語を使うことができるため、この機会に真剣に取り組みフランス語を使いこなせるようになりたいと思います。

また通常の授業も始まりましたが実践で使う統計学、途上国での実地調査で使う定量調査学という実践的な内容の授業に始まり、企業の途上国でのCSR活動が進んでいる欧米の民間企業の活動をアカデミカルに解析するビジネス学、途上国開発からの目線でみた政治経済学、歴史や理論から見る開発経済学など、途上国開発関連の機関・企業でも実際に使える内容と、それを支える理論・学術的な内容どちらもバランスよく学習できるカリキュラムになっています。また、この大学院は学国際機関でインターンシップを行っていた人や、民間企業で働いてきた人がもう一度学問として途上国開発を学び、その後本格的に国際機関・民間企業で途上国開発に携わるというケースが多く、私の様な大学学部を卒業してすぐこの大学院に進学するという人は少数派です。そのため、実践的な内容の授業では職務経験からの考察をする人や、実際に理論を実践に移した結果を理論の反論として出す人も多いのですが私を含めた学部新卒陣も負けじと今までのボランティア経験や調査活動を最大限生かして考察するなど、刺激的なディスカッションが行われることがしばしばあります。また実際に国際機関や企業のプロジェクトで途上国開発を行ってきた同級生からの話は授業内でも授業外でも、自分になかった視点や気づきを与えてくれます。日々、貴重な体験をしていることをしっかり心に留めて、今後も学習を続けていきたいと思います。

平成27年度10月

大学内で行われた講演会の様子

 写真:大学内で行われた講演会の様子

こんにちは。ジュネーブは10月になるとコート無しでは外に出れないほど肌寒くなってきています。日本では四季折々の料理や食材がレストランやカフェで告知されることで季節を感じることがあると思うのですが、こちらジュネーブでは物価が高く、ほとんどの人が外食をしないために、外食産業が発達していません。また、永世中立国であるジュネーブは海外からの輸入を極力避け、地産地消にこだわっているため海外の食材はあまり出回っていなく、パンなどはフランスの方が断然美味しいということで、ほとんどの人は毎週末にフランスに行って買い物をします。ジュネーブはスイスのなかでもフランス方向にはみ出た土地にあるので、私の学生寮からバスで10分ほどでフランスに行くことができるのです。

そんな週末の過ごし方をしている一方で、授業は本題に入り、知識をインプットしつつプレゼンテーションやディベートなどで知識をアウトプットする機会も多くなってきました。最近ではそのインプットを少しでも多くするため、授業の合間をぬって様々な講演会に参加しています。私の大学院は元国連総長のコフィアナンが卒業生だということや、国際機関への人材を育成する目的で創設されたということもありジュネーブのみならず世界中の国際機関による講演会が多く開催される場所となっています。2日に1講演ほどのペースで講演会が行われ、最近の難民問題に関する欧州の首相のディスカッションや、環境問題に関する民間企業・研究者・国連職員のディベートなどテーマや参加者は多岐に渡ります。今後もこのような機会を活用して、アウトプットに生かしていきたいです。

平成27年度11月

写真:お話を聞きに訪問した国連オフィスの様子

こんにちは。11月のジュネーブはますます寒くなり、雪が降る日もでてきました。以前は毎週末のように食材の買い出しに行っていたフランスも、ISISによるパリの爆撃によって一時入国が規制されたり、規制が解けたのちも入国が厳しくなったりと変化を感じています。日本で生活していた頃には、ヨーロッパでの事件や情勢の動きを知ってはいても、どこか自分の生活に直接的な変化がなく遠い存在に感じていましたが、ジュネーブで生活をしているとこのように欧州の情勢や事件によって肌で変化を感じます。私が大学院で取っている授業でも情勢の変化はすぐさま話題にのぼり、ディスカッションを行うことも頻繁にあります。様々なバックグラウンドをもった学生と意見を交わすことで世の中の流れをより広い視野でみるようになりました。

11月の授業では、中間テストと期末テストの間の期間だったということもあり、少し余裕をもって今までの復習をしつつ新しいことを学習していきました。また、私自身もテストを一度終え、満足とは言えないまでも結果を出すことができたという心の余裕から、授業外でジュネーブの国際機関に勤めておられる職員の方々とお会いして自分のキャリアプランや大学院で習得すべきことなどのアドバイスを頂いてきました。国連機関職員の方々と国連に属さない国際機関に勤めておられる方々のお話を比べてみると、やりたいことは1つでも様々なアプローチ方法や考え方があり得るということに気づき、自分のキャリアプランや大学院で習得していく内容に活かしていこうとおもいました。また、仕事内容だけでなく国際的な場で仕事をするということ、女性が一線で働くということ、自分の興味を仕事にするということという様々な内容でも多くのアドバイスをいただきました。たくさんの方から聞いたお話を整理し、しっかりと今後のキャリア選択、カリキュラム選択に活かしていこうとおもいます。

平成27年12月

Fete de L’Escaladeの様子

写真: Fete de L’Escaladeの様子)

こんにちは。12月と言えばクリスマスがありましたね。ヨーロッパはどこもクリスマスのお祝いムードに染まっているというイメージでしたが、こちらジュネーブはプロテスタントの街であるため質素な飾り付けで、街の人もいまいちクリスマスをお祝いしている雰囲気がありません。日本のイルミネーションの方がよっぽど華美に飾り付けられている様に思います。しかしそんなジュネーブには12月にクリスマスよりも盛り上がる一大イベントがあり、期末テストの合間を縫って参加してきました。Fete de L’Escalade(梯子登り祭り)という名前のそのイベントは、1602年にフランスに占領されそうになっていたジュネーブがフランス軍の「梯子作戦」という奇襲の妨害に成功し、晴れて独立を決めた歴史にまつわるものです。毎年12月11日付近の週末に、独立の祝福とその時期に亡くなった兵士を偲んで、ジュネーブ市民が当時の服装をして旧市街を練り歩くのです。兵士を弔う大聖堂がパレードの目的地で、その前を通る人々が皆脱帽し立ち止まってしばし黙祷をしていた様子が印象的でした。

学業の面では大学院生活の初めての学期が12月で終わりだということもあり、今月はテストにプレゼンテーション、レポートなど今までに学習したことを振り返る時期でした。今学期を振り返ると理論系の授業も実践系も半分半分で取っていたので、バランス良く自分の興味と興味外の分野に触れることができ、次学期で専攻を少し絞り担当の教授をつけるための準備ができた気がします。専攻分野の中でも学びたいことが非常にたくさんあり、それを今後取捨選択していく際に「知識があまりないから」という理由だけで決めたくないという思いから広範囲の分野に触れられる授業をとりましたが、その結果納得して分野をしぼれそうです。期末テストが終わり2月中旬まで長い期間冬休みとなりますが、その間にもきちんと目標を定めフランス語と絞った分野の文献を読み漁り次学期の準備をしようと思います。

平成28年1月

(写真: ジュネーブのカウントダウン花火の様子)

こんにちは!2015年も明け、2016年も早1ヶ月が経ちました。ニューヨーク、ロンドン、パリと年越しのカウントダウン花火が有名な都市はたくさんありますよね。ジュネーブでもそれらの都市ほどは派手ではありませんが例に漏れず、年越しは花火で祝う風習があります。私も年越しはジュネーブの有名なレマン湖に集まり、打ち上がる花火を見ながらあったかいワインを飲むという体験をしてきました。日本の静かな年越しが懐かしくもありますが、ジュネーブにきて以来、苦楽を共にしてきた仲間と集まって新しい年を迎えるのも一興でした。2016年最初の月は12月でしっかり休憩をとったので自己鍛錬の再開です。私の通うジュネーブの国際・開発研究大学院は、生徒に長期休暇中の国際機関でのインターンシップを推進していて、長期休暇が通常の大学院よりも長く設けられています。キャリアセンターがジュネーブに拠点を置く国際機関・企業との繋がりを多く持っており、生徒の興味分野のインターンシップを斡旋してくれるということに加え、インターンシップを授業の単位に変換してもらえる制度もあります。このことから、多くの学生がこの冬休みに世界各地に散り経験を積んでいます。私もこの制度を活用し、ジュネーブに拠点を置く民間企業と国際機関での短期インターンシップを獲得し1月は民間企業でインターンシップをしてきました。私がヨーロッパ留学を志した理由の一つである、企業の社会的責任(CSR)の拡大、ビジネスとしての持続性確保が強化されている現場を見て CSR事業に携わる機会を得ることができました。日本企業の実施しているCSRとの比較をしていると、NGOから企業へのプレッシャーが強いことに加え、企業のステークホルダーがCSRに関しての関心が非常に高いという欧州の現状、日本の環境との違いも見えてきました。また日本企業には国際的な社会問題に目を向けたCSR活動が多い中で、欧州は社会保障の延長という考え方をしているためか、欧州のCSRがカバーする領域は国内やコミュニティレベルにとどまるケースも多いという気づきもありました。しかし欧州企業が国際問題に取り組みビジネスとしても、社会問題解決の一助としても活躍しているケースは非常に多く、今回インターンさせていただいた企業もその中の一つです。2月からは、私の研究分野である途上国開発、と今回のインターンシップで得た、「進んでいるといわれている欧州でのCSRの現実」を組み合わせて研究を進めていこうとおもいます。

平成28年2月

写真:ジュネーブから少しいったところにあるスキー場

写真:ジュネーブから少しいったところにあるスキー場

こんにちは。2月のジュネーブは雪が降ったかと思えば、サングラスが必要なほど晴れ間が見えたりと天気が安定しませんでしたが、ジュネーブの観光シーズンだった為、街が今までにない賑わいを見せていました。ジュネーブの中心部からアクセスの良い、アルプスの山々がスキー場になっているこの時期は世界中からスキーヤー・スノーボーダーが集まってくると言われています。インターン先の民間企業や国際機関で出会ったインターン生たちの中には、休日にスキー場巡りをしたり、インストラクターをしてジュネーブの高い生活費を賄っていたりする人もちらほらいました。

そんな観光ムードの中、授業も始まり、国際機関でのインターンを掛け持ちし、国際機関に勤める日本人職員会の学生ボランティアも始めたため1月以上に忙しい日々を送っています。来期からは国際機関と連携したゼミや修士論文の執筆が始まるので今期の授業選択は慎重に行いました。ジュネーブ近辺の公用語であるフランス語の授業が毎週あるのに加え、今期は少し分野を絞り途上国の特徴とも言える農業・水関連の開発を見ていく授業や、マイクロファイナンスをはじめとした民間企業が開発に携われる方法の一つであるファイナンス系の授業などをとることにしました。また授業のない日はジュネーブの国際機関で、途上国における外資企業の参入の障壁を分析するアシスタントリサーチのインターンシップを始めました。まだ仕事が始まったばかりですが、自分の能力と他のインターン生や職員の方々の能力の差をまざまざと思い知らされています。経験も能力も断然足りていないプレゼンテーション能力や、アナライズ力をこの場で向上させるいい機会だと思い、毎日歯を食いしばって仕事に挑んでいます。国際機関の職員の方々と触れ合う機会が多くなってきたため、日本人の国際機関への就職を推進しているジュネーブの日本人職員の方々の取り組みに学生ボランティアとして参加させていただくことにもなりました。職員の方々へのインタビューを学生視点で行うことでもっと色んな人に国際機関での仕事を知ってもらうという取り組みになりそうです。私自身は民間企業の力で途上国開発を、と考えているものの国際機関との協力は欠かせません。そうなれば国際機関で働いている方々の考え方や物事の捉え方を知っておかなくてはいけない、と考えてこのボランティアを機に多くの方に話を聞いてこようと思っています。振り返ると目まぐるしく過ぎていった2月ですが、新しいこと尽くしで自分の成長の種もたくさん蒔かれた月でした。3月からも怖気付かずに新しいことを吸収していきたいと思います。

平成28年3月

写真:春の兆しが見えるジュネーブのレマン湖

写真:春の兆しが見えるジュネーブのレマン湖

こんにちは。3月のジュネーブはだんだんと暖かくなり春の兆しが見えてきました。3月末には1週間ほどのイースター休暇があり、他の大学や大学院生を見ていると多くの学生が近隣の欧州諸国へ小旅行に行っているようでした。しかし私のコースの多くの生徒は、イースター休暇明けに大量の課題の提出日やテストが控えていたためにあまり旅行にいく人は少ないようでした。

私も休暇中は必修のジェンダー論のレポートや幾つかのプレゼンテーションの準備に追われていました。ジェンダー論のプレゼンテーションでは、多くの背景を持った生徒が6人集まり途上国において経済・政治活動から除外されがちな女性・寡婦・トランスジェンダーの人々についてマイクロファイナンスや選挙法の改正のケーススタディーを行いました。グループにはインド・韓国・日本の男女均等ランキングが非常に低い国出身の生徒に加え、フィンランド・ドイツなど世界のなかでも男女均等が経済・政治面でも非常に進んでいる国出身の生徒がいました。そのため各々の持寄るコンセプトやアイディアが時折噛み合わないことが多かったのですが全員が途上国でのフィールドリサーチ経験があったため、途上国にフォーカスしたマイクロファイナンスやジェンダー問題をはらんだ政策の知識があり擦り合せることができました。世界各国からフィールドワークや一度国際機関や民間企業で働いてから入学してくる生徒が多いこの大学院の特徴を感じるプレゼンテーションでした。

2月から始めているインターンシップでも、通常のアナライズ業務を行うのと同時に新規プロジェクトの企画を出し、うまくいけば実行まで行うチャンスをいただくことができ、現在自分の得意分野で興味のある項目を挙げ、企画を練っている段階です。スポンサーにも魅力的で、プロジェクト費を出してもらえる企画である必要があるという点で難しさを感じています。また、3月から5月にかけての3ヶ月間はインターンシップを授業期間に行っていない人やスイス以外の国の人が6月後半から始まる夏休み期間に行うインターンシップを探す時期です。そのためボランティアをしている日本人の国際機関職員を増やす取り組みも力を入れる期間となっていて、日本人の国際機関職員へのインタビューも続々と行っています。今セメスターの残りも多くの取り組みを同時並行で続けていきますが、忙しくなる時期なのでタイムマネジメントに気をつけて行こうと思います。

平成28年4月

写真:レマン湖の周りの公園

写真:レマン湖の周りの公園

こんにちは。ジュネーブは4月に入り、少し気温が温暖になったこともあり、週末はジュネーブの中心にあるレマン湖沿いが出店や人で賑わい始めました。隣の国イタリアの流れを受けてジェラート屋が多く道端に出ていて、湖の周りを散歩しながらジェラートを食べるというのがこの街の日常風景のようです。まだ私にとっては肌寒いのですが北の国から来た人にとっては暖かいのか、すでに半袖で外を出歩いている人も見かけます。出身国によって体感温度が違うのは面白いですね。また、学期の半ばにさしかかり、プログラム内での親交を深めるためのポットラックパーティも週末に多く開かれるようになりました。自分の出身国の料理を作って持って行く形式のポットラックパーティでは、改めて世界にはいろんな国があり、日本にいては会えない人たちと切磋琢磨しているのだと実感がわきました。又、全く違う国なのに似た見た目や味の料理を見つけるとみなで歴史を紐解きながらルーツを探り、つながりが見つかると非常に盛り上がるという楽しい集まりでした。

2月から始まった今セメスターですが、今までの授業と並行して4月からARS(applied research seminar)という新しいゼミのようなものが始まりました。ARSはジュネーブにある国際機関とthe graduate instituteが提携して行うもので、 ILO、UNDPなどの大きな機関から、Africa 21など比較的小規模なNGOまである提携先ごとにthe graduate instituteの生徒2,3人の研究チームを作り国際機関と共同研究を行います。4月の上旬から提携先の紹介や、それぞれのARSでできる研究テーマなどの説明があり、中旬から希望のARSに履歴書や志望動機などを提出して選考され、下旬に結果発表という、今後1年弱かけて行うプロジェクトにしては素早い流れでした。プロジェクトの中には全て費用を負担してもらえるフィールドリサーチを含むものもあり、競争率は非常に高いようでした。前学期の成績や、提出した履歴書・志望動機書で厳しく選抜されると聞いていたので緊張しましたが、幸運なことに第一志望のARSプロジェクトに配属されました。「途上国・農村地域での農業組合への融資と、その融資のスクリーニング・モニタリング過程が農業の効率性に及ぼすインパクト評価」というテーマでILOと行います。今までのビジネスが貧困層に及ぼす影響、という視点に加えて形式や呼び名は異なってもどんな貧困地域にも存在するファイナンスという視点も深めていきたいと思います。どの ARSプロジェクトも、非常にテーマが細かく設定されていたため、希望のプロジェクトを選ぶ過程で自分の修士論文のテーマや今後のキャリア選択まで考える必要があり、悩みましたが現在とっている授業や興味にあったプロジェクトが選べたので頑張りたいと思います。

平成28年5月

写真:夕暮れのthe graduate institute of international and development (IHEID)

写真:夕暮れのthe graduate institute of international and development (IHEID)

こんにちは。ジュネーブのthe graduate institute of international and development (IHEID)という途上国開発学に特化した大学院に入学してから2つのセメスターが終わり、10ヶ月が過ぎようとしています。5月のジュネーブは天候が不安定で夏の気温の時もあれば、冬のように冷たい風が吹くときもありました。ジュネーブは夏が観光シーズンだ、といわれるように暖かい日は湖の近くでピクニックをしたり、サイクリングをしたりする人が多くいるようです。しかし5月中は各授業の期末テストやプレゼンテーション、レポート提出の締め切りが毎日ある、という2月から始まった今セメスターの集大成とも言える月だったため、市内で遊ぶということがほとんどなく、大学院と寮の往復を繰り返していました。しかし、5月はセメスターが終わる時期でもあり、来年から交換留学して卒業まで会えない人もいるためほとんどの週末は課題や試験を忘れる時間を作り、家で食事会をしました。パーティーの開始はみんなの勉強が一区切りついてからの22時から、などそれぞれの勉強を最優先にしつつも息抜きはしっかりする生活をしていたのでストレスを溜めすぎることなく5月を乗り越えることができました。

この10ヶ月の留学生活の開始当初は世界各国から集まってくる開発学専攻の年齢も異なる人々とともに同じ授業を受け、バックグラウンドの違いから生じる解釈や意見の違いに戸惑う事もありました。しかしこの環境のおかげで、プレゼンテーション、レポート、ディスカッションなどの自分の意見をアウトプットする際には自分が当たり前に知っていることが、プレゼンテーションのチームメンバーやレポートの読み手には当たり前でないことを念頭に置き、誰にでもわかりやすいように自分の意見を表明することができるようになりました。また自分の意見自体も、今までなかった視点も授業中のディスカッションで他の学生から学ぶことが多く、本当に自分の意見は吟味尽くされているのだろうか、と自分に対してもクリティカルに考え、いままでよりも深い思考をできるようになりました。また、この大学院進学の目的でもある、欧州のCSRやビジネスでの途上国開発の方法論も授業で学ぶことはできましたが、それ以上に自分の興味の軸をより多く、深くできたことが一番の成果だと思います。軸をもたずにジェネラルな途上国開発学を学ぶのではなく、今まで持ち続けてきた「ビジネスでの途上国開発」という軸に追加して多くの途上国の主要産業である「農業におけるリスクファイナンス」、その「ファイナンスのメンターシップ、モニタリングの農業に対するインパクト評価」というビジネスから発展して深く研究をすることができた10ヶ月でした。大学の国際機関とパートナーになり研究をすすめていくプログラム、ジュネーブの国際機関でのインターンシップによりさらにこれらの興味を調査・分析・アウトプットする能力がぐんぐん伸ばす事ができたと思っています。このような進学の機会を与えてくださった大真奨学金事務局の方々にも胸を張って成果を報告できる10ヶ月となりました。大学院はあと1年間あるのでさらに研究を進めてスペシャリストになれるように精進したいと思います。