留学レポート

イギリス/オックスフォード大学

平成27年度9月

写真:大学の食堂(Dining Hall)です。

平成27年9月、大真奨学生として英国留学を開始してから、初めての報告書の提出です。奨学生という身分で、大真株式会社にサポートをしていただきながら、留学をさせていただけることを本当に幸せに感じております。特に留学先の大学では、クラスメートの多くが国や企業から補助を受けながら学んでいるため、どういう団体から奨学金を受給しているのかも一つの話題の種になります。大真奨学生として、日本の企業から支援を受けて英国での学びを可能にしている話を他の国籍の学生にすることも一つの文化交流だと感じる日々です。

私が到着した、イギリスの夏〜秋の時期は大変に過ごしやすいです。気温も毎日15度くらい、日が沈むのも毎晩20時過ぎで、綺麗な街並みを散策するには年間の中で一番適した時期です。事前の課題図書や今、履修をしている準備コースの課題に追われながらも隙間時間には、生活の基盤を築くことも兼ねてなるべく外に出るようにしています。私が現在、勉強をしている英国のオックスフォードの街は学生都市で、街自体が38個の大学のカレッジから成り立っています。学生や教員は必ず、そのうちの一つのカレッジに所属をします。学生は勉学や私生活を同じカレッジに所属をする他の学生と共にすることから、大学という枠組みに加えて、カレッジという枠組みでの交流関係を築くことができます。オックスフォードに到着してまだ日が浅いこともあり、自分の中ではハリーポッターの寮制度と同じようなシステムだと言い聞かせて、理解をしています。蛇足ですが、ハリーポッターの映画に登場する食堂もオックスフォードのカレッジのダイニングホールが撮影に使用されていて、そこで日々食事をすることができるのもカレッジに所属をするメリットだと思っています。

10月から修士課程のプログラムを開始しますが、一足先に英国・オックスフォードに到着をして、大学で勉強を開始しました。現在は所属するデパートメントで統計分析の勉強をし、9月初旬から修士課程の準備コースに所属しています。授業では、アカデミアとして論文執筆をする際に課題になる事柄の分析等をしています。

大学は大変に国際色が豊かで、教授、チューター、スタッフ、学生共に世界中から集まっていて、イギリスにいながらにして、様々な国籍の人々と意見交換をすることができます。修士課程に所属する学生は年齢層も幅広く、たわいもない話のつもりが、難民受け入れの是非、英国のEU離脱の是非、出身国の教育制度、政治、文化等、大変に興味深い話に展開することも多々あります。修士課程の授業が開始後は、研究室に籠もりがちになることもあると思います。しかし、オックスフォード特有のカレッジの枠組みを存分に活用して、国際色豊かな環境で、異なる学問領域を深めている他の学生、教授と出会う機会を大切にしていきたいと思っています。

平成27年度10月

写真: 入学式(Matriculation Ceremony)の様子です。

平成27年10月、大真奨学生として英国留学を開始してから、早くも2ヶ月が経ち2回目の報告書の提出です。日々の授業の予習と復習、課題図書の読破を試みる生活の中で、オックスフォードで勉強をしている特権とも言える出来事がありました。私は高校生のころから、アランシュガーという英国出身の起業家の思想に憧れてきました。大学では彼の自叙伝を読むことを通して、英国人ならではの、彼の考え方やビジネスに対する姿勢を学んだと思います。学歴や両親の社会的地位にかかわらず、学ぶ姿勢と感謝の気持ちがあれば誰でもビジネスの世界では頂点に上り詰めることができるという彼の豪快な考え方に惹かれていました。さて、去る10月12日、その日は訪れました。夢にまで見ていたアランシュガー氏がオックスフォード・ユニオンという学生団体が運営をするイベントにて登壇したのです。高校生のころから憧れだった人物を間近にした瞬間の喜びと興奮は絶対に忘れることができません。留学をすることによって、日本では絶対に成し遂げられない経験ができるということを身をもって感じた瞬間でもありました。

10月は大学の年間カレンダーの初月ということもあり、大学では正式な入学式がありました。英語ではこの入学式のことを「Matriculation Ceremony」と言います。伝統を大切にするオックスフォードではこの式典は特に重要視されています。学生は黒いリボン、白い蝶ネクタイ、ガウン、キャップ等の普段は見慣れない、少し堅苦しいドレスコード厳守で式典に参加します。そして、所属するカレッジの学生と共に副学長によりラテン語を通して正式に大学のメンバーとして認められます。この日は特別な日でカレッジ毎にカレッジの食堂で一堂を会して学士・修士・博士課程の学生全員で食事をすることも義務づけられています。厄介なことに、このガウンは試験を受ける際にも着用が義務付けられています。ガウン着用の必要性を問う意見が高まる中、昨年、大学に所属している学生全員を対象にガウン着用の継続か廃止を問う、投票がありました。結果は、驚くことに90%以上の賛成で、ガウン着用の継続が正式に選択されたようです。今後50年はこの歴史は覆されることはないでしょう。日々の生活を通して、大学が歴史を重んじる側面を様々な場面で垣間見ています。

大学での授業の内容は非常に充実しています。教授陣は学生に対して精一杯に学生のニーズに応えようとしています。デパートメントでは、学生への期待は高いですし、提出物や課題への評価が大変に高いと日々感じますが、同時に教授に助けを求めたり、質問を投げかけると親身になって相談に乗ってくれます。生徒と教授の距離が大変に近いという点は非常に大切だと改めて感じています。私のプログラムは英国人が若干多いですが、国際的な人員でコースは構成されています。11月中旬には初めてのプレゼンテーションやエッセー提出があり、来月は勉強に奮闘する日々を過ごすことになると思います。

平成27年度11月

New CollegeNew college chapel

平成27年11月、留学先のイギリスは10月25日に夏時間が終わり、冬時間に突入したため、11月中旬頃からは、毎日4時くらいには辺り一面が真っ暗です。イギリスの冬は天気も悪く、太陽が出ているにもかかわらず、常に雨になりそうな空模様が続きます。観光をしたり、外でスポーツをするには適していませんが、勉強に集中するには最適の気候で、図書館に足を運ぶ回数も自然と増えました。11月は緩急をつけつつも、自分の研究に専念することができた月でした。

先月に続き、英国で勉強をしている特権とも言える出来事がありました。それは、私が影響を受けて言語教育学を専攻するようになった理由でもある本の著者に実際に会う機会が与えられたことです。言語学の一つの大きな役割に消滅危機の可能性がある言語を救うことがあります。(言葉の死とその再生)私が学部一年で出会ったDavid Chrystal氏の応用言語学の本も同様に言語の消滅とその保護に関して触れていました。また、現在の彼の専門は特に、シェークスピアの時代に使われていた旧英語の発話を蘇らせることで、今回の講演も旧英語の発音と文法構造の関係に関連する内容でした。現在グローバルに英語学習の必要性が唱えられていますが、実際に英語がどのような歴史を辿り、形成されてきたのかを知ることの大切さを改めて学びました。同時に、世界中で常に変化を遂げつつある英語が、今後どのように発展していくのかを考えさせられる貴重な機会でもありました。

また、11月はプレゼン発表やエッセーの課題提出もあり、他者からフィードバックを受けることを通して、自分の勉学の進捗状況を改めて、振り返ることができる充実した月でもありました。プレゼンテーションでは、ある言語の助動詞学習者が統計的にどのような過程を得て学習を遂げていくかというケーススタディーを取り上げました。質疑応答ではクラスメートを含め教授から、鋭い指摘が次々に飛んできました。特に調査方法に関しての欠点や実験結果の報告の仕方に関して自分の範疇にない部分でも多くのコメントがあり、自分の研究に直接、応用することのできる指摘内容ばかりでした。批判的能力を磨く重要性が日本でも昨今唱えられていますが、何を批判的能力と定義づけるのかは曖昧であります。私なりの理解ですが、批判する対象の長所と短所を客観的に判断し、両方に触れながら、より筋の通った論点を導き出すことだと、普段の勉強を通して感じています。大学院の勉強では一貫して、この批判的思考力の追求が求められます。他人のことを誹謗中傷していると感違えされやすい、批判的能力は日本教育では自然には培われにくい能力であります。アカデミアの世界では、他人の研究結果を覆すために多くの努力がなされています。今後、私も多くの知識を蓄え、公平な視点から事象を批判する能力をつけていきたいと思います。

平成27年12月

12月オックスフォード様子キャロルサービス様子

平成27年12月に入り、クリスマスの時期が近づきました。私の留学先の大学では 同時に学生たちは長期の冬休暇に入りました。学部の学生は皆、その期間は一時退寮し、実家に帰ります。修士課程の学生は特別な手続きを経れば、長期休暇中でも寮には滞在をすることができます。私の大学は3学期制を用いていますが、各学期が大変に短いのが特徴的です。例えば、英国内の大学、ロンドンやエジンバラ大学は各学期が11週間程度ですが、オックスフォード、ケンブリッジは8週間で各学期が終わります。学生にとってのメリットは、非常に高い寮費の支払いが最小限に抑えられること、学期中は最終評価に直接影響する試験が課されないために講義の予習復習に集中できることが挙げられます。しかし、その分、試験や課題レポートの提出期限は毎学期の第1週に設定されるために休暇中は、学生は羽根を伸ばすというよりも、真面目に復習をすることが求められます。イギリスでは休みのことは「holiday」と言われますが(アメリカ英語「vacation」と比較して)、オックスフォードでは単なる「holiday」というニュアンスを込めたくない意図があり長期休暇は「vacation」と学内の人々から言及されています。

さて、私のコースについて少し触れさせていただきます。私のコースは所属している教育学デパートメントで開講されているコースの中でも一番に高い中退率を記録していて、課題や試験の量も非常に挑戦的です。この冬休暇には一学期目にコース内で取り扱った内容と関連したエッセーのお題が15個提示され、そこから5つトピックを自由に選択し、3000文字のエッセーを合計5つ提出する課題が出されました。修士課程の修士論文は大体、15、000から20、000文字の長さです。したがって、休暇中の一ヶ月で修士論文と同等の分量の課題提出が求められます。日本の大学で学部生として勉強をした私にとって、イギリスの大学で勉強をする際に最も異なると感じることは、授業でカバーされる内容だけを把握していても、その知識は課題や試験ではあまり役に立たないということです。したがって、試験勉強、指導教官と面接をする際、様々な場面で、授業で扱った内容は基礎知識としてしか見なされません。自分で情報収集を重ね、批判的に過去の実験結果や実験方法を分析して付加価値をつけて自分の言葉で報告する必要があります。本修士課程を開始する以前、私は学部の勉強を通して、この批判的思考能力を培ったと思い込んでいました。しかし、実際に大量の文献を目にして、正当性のある情報のみを吟味する作業は思っていたよりも複雑でした。自分の研究が学問分野においてどのような付加価値を生み出すのかを正しく理解するためにも、情報分析力と批判的思考力の向上は、今後の課題として益々力を注いでいきたいと思います。

また、イギリスは一年の行事の中でも特にクリスマスを大切にする国です。大学内ではクリスマスキャンドルサービスやキャロルサービスが12月中には頻繁に開催されました。学生は家族も同伴することが可能で、家族でクリスマスを祝うお国柄がそういった場面からも伺うことができました。冬季休暇は12月中旬に開始しますが、その間は図書館も、大学内施設も全て、閉まってしまいます。今はそれまでに必要な文献集めのために大変忙しくしております。日頃から大変お世話になっております、大真株式会社の皆様、どうぞ素晴らしいクリスマスとお正月をお過ごしください。また来年、2016年1月に英国の様子を報告させていただきます。

平成28年1月

学部

平成28年1月には、留学先オックスフォードでもこの冬はじめての積雪が記録されました。今年は、例年に比べて暖冬のようで、その日も、雪が積もったと思ったのも束の間で、お昼過ぎにはすぐに雪は溶けて無くなってしまいました。また、雪が降ったのも1月を通してたったの1日のみでした。イギリスの冬は極端に寒いというイメージがありますが、今年の冬を例に取ると、実際には東京の冬の方が寒いかもしれません。また、イギリスの建物の中にはほぼ100%セントラルヒーティングが完備されているので、イギリス留学中には凍えるような経験をすることはなさそうです。

1月中旬には大学の新学期が開始しました。休暇中に帰省していた学部の学生達もオックスフォードの街に舞い戻り、街に活気と賑やかさが戻りました。学部の学生は各カレッジで行われる「Collection」という試験を各学期のはじめに受けることになります。この試験は学部や大学は運営に一切関与せず、問題作成から試験の実施まで完全に各カッレジに任されています。学部生の教育の比重がカレッジに置かれている様子がこういった伝統からよく伝わってきます。「Collection」の成績は全体の成績には反映されませんが、各自の勉学の進捗状況を測るためのテストだと捉えられています。実際に成績を左右する期末試験は全部まとめて、3学期目の終盤に一回のみのチャンスで課されるようです。

また同時に、1月には大学で開催された英語教育のシンポジウムにも参加する機会に恵まれました。ディスカッションの中では日本や香港の英語教育に触れる場面も見受けられました。特に、シンポジウムでの議論の焦点となったのは、非英語圏で大学の授業を英語で教えるイマージョン教育についてです。日本の場合は、グローバル化を牽引する大学が教養学部を新たに開設したり、留学生を呼び込むことを兼ねて、英語で授業を行うプログラムを推進しています。しかし、議論の焦点は、果たしてこの取り組みが学生の教育に本当に役立っているのかということでした。本シンポジウムには、世界中から英語イマージョン教育に関する研究をする研究者達が多く集まりました。第一線で活躍されている学者達からアドバイスをもらったり、彼等の講義に参加できた経験は、自分の研究を進めるにあたって、大きな糧になりました。

最後に、現在行っている課外活動に関して少し触れさせていただきます。私は現在、第二言語として英語を勉強しながら学校通っている子供(大抵は移民として英国に渡ってきた子供達)の家に行き、チューターをするボランティアを毎週行っています。この活動を開始してから、4ヶ月が経ちました。私がチューターをしている生徒はモンゴルの出身の15歳の男の子で、毎週宿題を一緒に見直したり、英語の文法を勉強したりしています。彼は大変に素直で、真面目で、一生懸命に私から学ぼうとしてくれている姿勢が常に伝わってきます。多国籍化が進む英国においても、言語のサポートが欠如しているがために、学校の授業についていけない生徒がいることは事実です。言語教育を専門にしている私にとって、実際に言語のサポートを必要としている子供達とともに過ごすことのできるこの時間は大変にかけがいのないものになっています。

平成28年2月

平成28年2月に入り、早速2学期のはじめに提出した試験の結果が発表されました。他のコースに所属をしている友人と話す中でも、一概に感じることは英国の大学での評価基準は日本と比べて、大変に厳しいということです。日本で「A」に値するレベルの課題も、こちらでは単位を落とすか落とさないか位の評価にしかつながらないこともしばしばあります。その分、公平性を保つためにも「A」から「D」のそれぞれの評価基準は大変に細かく分類されていて、学生もこの情報にアクセスすることが可能です。したがって、平たく言えば、学生は何をすれば良い点数を取ることができるのか事前に情報を得ています。この評価基準に対する透明性も英国特有であると私は思います。

英国での課題に対する評価基準が大変厳しいのは、以下の理由だと感じます。一つは、やはり、英国では批判的思考能力がどの程度、提出物に盛り込まれているかが高く評価されている点です。私がしてはいけないと分かっていても、よくおかしてしまう誤りは、読み漁った参考書やテキストの内容をとにかく綺麗にまとめようとすることです。自分の持っている情報をひけらかすためにもなるべく多くの知識を論文に盛り込ませようとしてしまいます。課題図書を読破しているということを示すことももちろん大切ですが、有名な学者の意見や主張を単に自分の言葉で言い換えるのではなく、それに対しての自分の批判点を論理的に述べることが求められていると日々感じます。

他の理由としては、英国の大学は学生の書く英語の文章の綺麗さを重要視することだと思います。この点は非英語話者にとっては難関な壁だと思います。細かいカンマの位置やハイフンの位置等の論文を書く際の特有の決まりも重要視されています。現在、英語はますます、グローバルな立ち位置を確立していく成長段階にありますが、少なくとも、英国ではやはり、保守的な考えが蔓延っていて、大学で綺麗な美しい英語を書くことが求められていると強く感じます。

また、2月終盤には日本の大学からオックスフォードに短期で英語を勉強しにきている学生たちの授業を短期で担当する機会に恵まれました。普段の自らの研究の中では、どのように外国語が学習者に最も効率良く学ばれているのかに焦点をあてています。その私にとって、実際にその知識を活かして、日本語を母語とする学生とともに、英語を学ぶ機会を持てた喜びは大変に一入でした。同時に、教師として教壇に立つ経験をオックスフォードでもつことができたのは、大変に貴重でした。今学期も残すところ3週間となりましたが、今回返却された試験の結果を励みにして、残りのプレゼンテーションや論文の課題に全力で取り組みます。

平成28年3月

平成28年3月に入りました。留学先オックスフォードは朝には路面が凍結していることが多く、春の到来はまだ先のようです。また、早朝には街中には霧が一面に立ち込めて、5メートル先にあるものを一切認識することができないといった現象も頻繁に起きています。霧で有名な英国ならではだと思います。3月は期末試験で大学の雰囲気はやや緊張気味に張り詰めています。また、街中では試験を受けるためにタクシード等の正装と大学のガウンを着た学生たちの姿がよく見受けられます。やはり、個人的には試験を受けるためだけの正装が存在するという不思議な伝統を受け入れることができておりません。

3月に入りすぐに、日本からオックスフォードを訪問している学部の学生に社会言語学入門の授業を教える貴重な機会に恵まれました。私の所属している教育学部では修士課程以上のレベルの学位を専攻している学生のみが所属をしてます。したがって、普段は、学部生を教える機会はそうそうにありません。今回の教授経験は準備段階から実際に教壇に立ち授業を行う全ての段階において多くの気づきがありました。特に、担当の指導教官が立ち会ってくださり、授業の終わりに多くのフィードバックを下さいました。今後、授業を担当する別の機会に今回の反省点を活かしたいと思います。

また、3月には、他にも嬉しいことがありました。それは、九州から高校生40人が修学旅行の一環でオックスフォードを訪問してくれたことです。私は、彼らの講習会に参加する機会にも恵まれ、目をきらきらと輝かせた高校生と私の研究について共有をすることができました。また、同時に高校生たちも自分たちの研究テーマを班ごとに分かれて発表をしてくれました。彼らの発表を聞く中で、日本でもコミュニケーション能力を重視した英語教育が段々と行われている実態を実際に垣間見ることができました。

また、3月10日夜にはオックスフォード大学においても3.11東日本大震災の犠牲者へ哀悼の意を捧げるための追悼行事が行われました。日本人をはじめ、国籍を問わず会場に入れんばかりの大人数が駆けつけました。地震体験者として遥々福島県からゲストスピーカーも渡英し、福島の復興の様子や福島の現在の様子を熱く語ってくださいました。英語にてスピーチをしてくれた小学生の女の子が涙を浮かべる姿もステージで見受けられ、会場全体も目頭を熱くしながら、ステージを温かく見守っていました。5年経過した今でも全世界で多くの人々が心を痛め、黙祷をする場を設けています。多くの人々が日本に関心を寄せ同時に、応援してくれている様子を実際に見て、日本人留学生として多くのことを考える一時になりました。

平成28年4月

Oxfrod Rose

平成28年4月には留学先のイギリス南部でも日照時間が急に長くなりました。一般的に英国では日光が相当貴重な存在のようで、そこまで暖かくもないのに太陽が出る日中には、半袖半ズボンの人々で街が溢れかえっています。私にとっては、まだ寒すぎるので、そのような薄着では、外には出ることはできません。日光に対して特別な思い入れを抱く英国の国民性がそういった街の風景の随所に滲み出ていると日々感じています。

今月はイースター休暇に入ったためにクリスマス休暇と同様に3000字のエッセーを休み明けに5つ提出する課題に追われていました。それに加えて今回は試験も同時期にあったので、休暇といってもほぼ、図書館や研究室にこもって、勉強に勤しむ日々でした。以前、学部生の時、英国の他の大学に交換留学を経験したことがありますが、その頃の勉強量とは比較にならないと常々感じています。休暇中は周りの友人たちをみていても課題が非常に大変で、帰省することもままならず、旅行等の休暇行事も多くの学生が控えている印象を受けました。特に3学期制をとっている英国の大学では最後の学期は授業に加えて試験、学位論文の提出が求められます。したがって、その直前のイースター休暇は休暇でありながら、学期中と同様の勉強量を保つことが求められていると強く感じました。

4月中旬には私の所属する教育学部でケンブリッジ大学とオックスフォード大学の教育学部が混合で企画したシンポジウムが開催されました。私はそこで、スタッフのメンバーの一員として当日の司会運営等を担当しました。当日予定していたスピーカーが来れなくなってしまったり、宗教上の理由で食事制限がある出席者が急に発覚したりで、当日は臨機応変な対応が求められる、大変に多くのことを学ぶ1日でした。シンポジウムの内容としては、英国での移民の教育問題や開発支援国での教育等のマクロな視点での教育問題でした。特に学校のデザインが教育の質にどのように影響を与えるか議論になりました。

また、英国の一年間の修士過程では、修士論文の提出が学位を開始した翌年の8月に求められます。(中には9ヶ月の修士課程もあり、コース開始の翌年の6月に提出です。)私のコースの場合には8月末に提出予定なので、修士論文の研究手法の選定をしたり、自分の調査に参加してもらえるように、英国・日本の多くの教育機関にコンタクトを地道にとる活動もイースター休暇中に、同時並行で行っていました。英国の修士過程は一年間という限られた時間内で多くの成果を求められるので、ある意味休暇中の時間の使い方が修士論文の質を大きく左右すると言っても過言ではありません。

平成28年5月

Ball Party

今月は修士論文の執筆のために多くの時間を割く一ヶ月でした。英国の修士課程は多くの場合、一年間のプログラムです。そのために修士論文で何を書くのかはプログラム開始前もしくは開始直後には決めておく必要があります。早いように感じますが、コースが開始すると日々の授業、コースワーク、チュートリアル等で修士論文に時間を割くことは思うようにはできません。私の場合にも既にリサーチプロポーザルを書きあげた状態でプログラムを開始しました。指導教官に挨拶にいった初日には、既にそのプロポーザルに沿って、細かい研究手法等を話し合う程度でした。そして、多くの場合には、コース開始後から約一年間かけて、指導教官と相談をしながら、修士論文の内容を細かく詰めていきます。

今月はコースワークの量が少し減ったために、修士論文のために時間を多く割くことができました。特に二つの大きな活動に従事しました。一つ目は、現在ボランティア活動をしている団体(以前にも紹介させていただきました)を通して、英国の移民の背景をもつ大学生たちにインタビューを行ったことです。移民の背景をもつ学生たちがどのような問題を学校生活を通して抱えているのかをインタビューを通して多面的に調査しました。この調査は約一週間かけてオックスフォード大学で行われました。二つ目は、日本にて複数大学を訪問し、日本の大学生が高校から大学に進学をした際に学習においてどのような困難を抱えているのかをインタビューやアンケートを通して調査したことです。この調査は大学から支援を受けて、日本で約5日間かけて行われました。10月から長期間、指導教官と話し合ってきた、調査方法を実際に実践に移すことができて、大変に嬉しく思いました。現在はこの異文化間の二つの教育データを比べることを試みていますが、実際にデータを収集する際には多くの弊害があり、思うようにデータを集めることができなかった事実は隠すことができません。したがって、このデータを基にしてこれからどのような比較をすることができるのかを指導教官と話し合うつもりです。

また、日本訪問時には母校の大学を訪問して言語学や大学院に関しての講演会を開きました。自らの修士課程での研究の話しから留学全般の話し、奨学金の話し等多くの事柄を現役大学生の皆さんと共有する機会に恵まれました。多くの学生さんから講演会後には、「自分も勇気をもらいました。留学をしたくなりました。」と言っていただき、海外に既に留学をしている一人の日本人留学生としての役割を果たせたように感じました。日本の学生が今後さらに海外留学をしようと思うきっかけを作りに貢献したいと強く願っています。

他には5月には、二人の著名人を目にする機会にも恵まれました。一人目は英国のウィリアム王子です。オックスフォード大学の公共政策大学院の新校舎が公式にオープンしたために大学施設を訪問していました。また、第68代アメリカ合衆国国務長官ジョン・ケリーも講演のために大学を訪問していました。以前も述べさせていただきましたが、著名人の講演会に参加することができる機会が多く設けられているのも英国大学院で勉強をする魅力だと思います。